世界5大ウイスキーの中で、販売シェア50%と最も飲まれているスコッチウイスキー。
スコッチウイスキーは、ウイスキーの本場スコットランドで造られており、100を超える蒸溜所があります。とても種類が多いので、初心者の方を悩ませるウイスキーでもあります。
この記事では、初心者の方におすすめのスコッチウイスキーを紹介。さらに、選び方や基礎知識について解説します。
スコッチウイスキーを選ぶ際のポイント3つ
ウイスキーは、原料や造り方、蒸留所のある地域、熟成に使用される樽によって味わいはさまざまです。
自分がどのような特徴をもつウイスキーが好きなのかを知るために、スコッチウイスキー選びのポイントを紹介します。
ウイスキーの種類で選ぶ

ウイスキーは、「モルトウイスキー」「グレーンウイスキー」「ブレンデッドウイスキー」の3種類あり、それぞれに特徴があります。
- モルトウイスキー
- 麦芽(モルト)のみを原料にし、単式蒸溜器で3回(または2回)蒸溜したウイスキー。シングルモルト・アイリッシュウイスキーとも呼ばれます。原料由来の香りや味が色濃く反映されるので、個性豊かなウイスキーに仕上がります。
- グレーンウイスキー
- トウモロコシなどを主原料にし、連続式蒸溜器で蒸溜したウイスキー。クセが少なくマイルドな味が特徴です。
- ブレンデッドウイスキー
- ブレンデッドウイスキーは、個性豊かなモルトウイスキーとなめらかなグレーンウイスキーを組み合わせてブレンドしたウイスキーです。ウイスキー初心者の方や、飲みやすく口当たりの良いウイスキーが好きな人におすすめです。
産地で選ぶ

スコッチウイスキーの生産地は、細かく分けられており、6つの地域があります。地域によってウイスキーの味わいや香りに違いがあるので、それぞれの特徴を知っておくとよいでしょう。
- ハイランド
- ハイランドは、スコットランド北部の広大な地域を指します。険しい山や谷が多い高地のため、南部の低地で「ローランド」と呼ばれる地域に対してハイランドと呼ばれています。たくさんの蒸留所があることから、さまざまな個性を持ったウイスキーがつくられています。
- スペイサイド
- スペイサイドで造られるウイスキーは、華やかでフルーティーな味わいが特徴です。日本でも人気の高い「マッカラン」や「グレンフィディック」が作られている地域です。
- ローランド
- ほとんどのスコッチウイスキーの蒸留は2回ですが、ローランドでは、アイリッシュウイスキーの影響を受けて3回行っている蒸留所があります。そのため軽やかで繊細な味わいが特徴です。
- アイラ
- アイラ島の8つの蒸留所は、ほとんどが海に面していて、そこでつくられるウイスキーは、独特のピート臭が特徴です。
- キャンベルタウン
- キャンベルタウンで造られるウイスキーは、港町らしく潮の香りが特徴です。
- アイランズ
- アイランズには7つの蒸溜所があります。それぞれが異なる個性を持っているので、特徴というものはありません。アイランズという大きな分けかたでなく、蒸溜所ごとの特徴を見るたほうが良いでしょう。
熟成樽で選ぶ

ウイスキーは熟成する樽の種類によって味わいや香り、色に変化が生じます。
バーボン樽
バーボンウイスキーは、新樽の使用が義務づけられているため、使用後の樽が大量に出ます。大量にあるため価格も安く、そのためスコッチウイスキーの熟成に使われる樽の9割がバーボン樽です。
樽の素材であるアメリカンオークのフルーティーな香りや、樽の内側を焦がすことで生まれるバニラのような香ばしさ、モルトウイスキーのクセをやわらげて、まろやかな口当たりにしてくれます。
シェリー樽
シェリー樽は、主に高級なスコッチウイスキーの熟成に使用されています。シェリー樽と言っても、どのタイプのシェリー酒を保存していた樽かによってウイスキーの味わいも変化します。
香り高い辛口のオロロソの樽は、深いコクと熟成感を、口当たりの軽いフィノの樽はシャープで繊細な香りをもたらします。
オーク樽
バーボン樽には、北米産のホワイトオークが使われています。ホワイトオークの樽は、バニラやココナッツのような甘い香味を生みだします。
シェリー樽やワイン樽などにはヨーロピアンオークが使われていましたが、現在はシェリー樽もほとんどがホワイトオークです。ヨーロピアンオークは、ドライフルーツやチョコレートのような濃厚な香味を生みだします。
ミズナラ樽
日本では戦後、サントリーがミズナラを使った樽を作りました。香木思わせるようなオリエンタルな香りのウイスキーを育ててくれます。シーバスリーガルでは、日本限定でミズナラ樽を使ったブレンレンテッドスコッチウイスキーを作っています。
いずれの種類の樽も、使用された回数やどのような種類のお酒に使われていたのかによってスコッチウイスキーの味わいが変わります。
【種類別】スコッチウイスキーおすすめ銘柄23選!
スコッチウイスキーのおすすめ銘柄を「モルトウイスキー」「グレーンウイスキー」「ブレンデッドウイスキー」の種類別に紹介します。
モルトウイスキーおすすめ10選
ザ・マッカラン 12年

ザ・マッカランはスペイサイドで造られており、完成度の高さから「シングルモルトのロールスロイス」と称されるウイスキーです。
なかでも「マッカラン 12年」は、マッカランを代表する銘柄であり、クセが少なく誰でも飲みやすい味わいのウイスキーです。
マッカランこだわりの製法によるシェリー樽で12年間熟成されているため、シェリー樽ならではの華やかな香りとかすかなスパイスを感じられます。また、バニラやドライフルーツの甘みに加え、スパイシーなアロマを楽しむことができます。
ザ・グレンリベット 12年

ザ・グレンリベットは、1824年にイギリス政府公認第一号として認められた、シングルモルトのスタンダードとも言われるスコッチウイスキーです。
「ザ・グレンリベット 12年」は、スタンダードボトルと言われており、飲みやすさに定評があります。
アメリカンオークの空き樽で12年以上熟成されて生まれた、バニラのような口当たりとスッキリとした味わいが特徴です。また、フルーティな香りとハチミツの芳醇な風味を感じられます。
グレンフィディック 12年 スペシャルリザーブ

グレンフィディックは、スペイサイドのダフタウンにある蒸留所でつくられるシングルモルトウイスキーです。1886年設立で130年以上の歴史を持つ蒸留所で、厳選した大麦と敷地内にあるロビーデューの上質な湧水を使用し、徹底した品質管理のもとでモルトウイスキーがつくられます。
グレンフィディックには、「15年 ソレラリザーブ」「18年 スモールバッチリザーブ」「21年 グランレゼルヴァ」などのラインナップがあります。このシリーズの中でもお手頃な「グレンフィディック 12年」は、フルーティーな味わいでクセが少なく飲みやすいシングルモルトです。
ボウモア 12年

アイラ島にあるボウモア蒸留所でつくられるシングルモルトウイスキー。ボウモア蒸留所の創業は1779年、アイラ島最古の蒸留所で、スコットランドでも1、2と言われる古い歴史を持ちます。
水に浸した大麦を床に広げて発芽を促す「フロアモルティング」という伝統的な製法を今も頑なに守っています。
ボウモアには12年、15年、18年などがありますが、「ボウモア12年」はボウモアの特徴である、潮の香りと甘美な気品に加えて、ドライなスモーキー感と柔らかなフルーティー感です。
ラフロイグ 10年

ラフロイグは、ウイスキーの聖地と言われるアイラ島にあるラフロイグ蒸留所でつくられる王室御用達のモルトウイスキーです。
アイラモルトの特徴である薬品を思わせるような独特なヨード臭に、やや塩っぽくてドライな後味といった強烈な個性が特徴です。
タリスカー 10年

タリスカーは、1830年に設立された蒸留所で現在スカイ島唯一の蒸留所であるタリスカー蒸留所がつくるアイランズモルトウイスキーです。
「タリスカー10年」は、ほのかな潮の香りと生ガキや柑橘系の甘みを感じさせるような力強いピートの香りが特徴で、「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」などの世界的コンペティションで数々の受賞歴を誇っています。
ハイランドパーク 12年

ハイランドパークは、スコットランド北部のオークニー諸島の島の一つメインランド島の蒸留所で作られています。瓶に描かれた渦巻状のデザインとボックスのエンボスは、ノルウェーのウルネスにある12世紀建造の木造教会をイメージしたものです。
ハイランドパークには、18年、25年、40年などのラインナップがあります。12年はそのなかではスタンダードですが、シェリー樽で熟成されたことによるコクのある香りと、深みのある甘さ、スモーキーさが特徴です。
ラガヴーリン 16年

アイラ島のラガヴーリン湾に面した蒸留所で作られるシングルモルト。1816年に設立されたラガヴーリン蒸留所は、ホワイトホースの創業者であるピーター・マッキーがウイスキー造りを学んだ蒸留所として知られています。
オークカスクの中で最低でも16年熟成され、情熱的でスモーキーな甘みと豊かな香味を感じさせ、多くのウイスキー愛好家からアイラモルトの決定版と評価されています。
カリラ 12年

カリラ(CaolIla)は「アイラ海峡」という意味。アイラ島にある1864創業のカリラ蒸留所でつくられるウイスキーです。
蒸留所の生産量はアイラ島最大規模で、生産されたウイスキーの多くはジョニーウォーカーの原酒として使用されています。
カリラ12年は、上品でスモーキな香り、柔らかく甘くフルーティな味わいで非常にバランスが取れています。
アードベッグ コリーヴレッカン

アードベッグ蒸留所は、アイラ島のポート・エレンという町の東に位置しています。
この蒸留所でつくられるコリーヴレッカンは、フレンチオーク新樽熟成の原酒を使用していて、強烈で荒々しく個性的。アイラモルトの中でもトップクラスのピーティーさが特徴です。
2010年のワールドウィスキーアワード(WWA)では、シングルモルトの最高賞であるワールドベスト・シングルモルトを受賞しています。
グレーンウイスキーおすすめ3選
ロッホローモンド シングルグレーン

「ロッホローモンド シングルグレーン」は、世界的にも非常に珍しい連続式蒸溜器であるカフェスチルを使用し造られているシングルグレーンウイスキーです。
りんごの様なふくよかな甘みと樽由来のほのかなバニラ香が特徴です。
キャメロンブリッジ

「キャメロンブリッジ」を製造しているキャメロン・ブリッジ蒸留所は、世界で一番最初にグレーンウィスキーを造った蒸留所として有名です。
シェリーとキャラメルのような甘い香りが特徴です。
ヘイグ クラブ クラブマン

「ヘイグ クラブ クラブマン」は、スコットランドの最も古いグレーンウイスキー一族であるヘイグ家が造るシングルグレーンウイスキーです。
バーボン樽で熟成され、なめらかな口当たりとバニラの甘い香りが特徴です。
ブレンデッドウイスキーおすすめ10選
バランタイン 17年

バランタインは、「ザ・スコッチ」とも呼ばれるスコッチの中でも代名詞的な存在です。1937年に発売されたバランタイン17年は、スコットランド各地でつくられるモルトウイスキーとグレーンウイスキーを厳選、40種類以上をブレンドしています。
17年以上も長期熟成させた原酒たちによる奥行きの深い気品ある香りと繊細で複雑な味わいが特徴です。2019年には、Whisky Bible AwardのScotch Blend of the Yearを受賞しています。
シーバスリーガル ミズナラ 12年

シーバスリーガルは、ブレンレンテッドスコッチウイスキーとして、世界的に人気のブランドです。熟成年数や熟成樽、モルトとグレーンの割合を変えた数種類の商品がラインナップされています。
なかでも「ミズナラ 12年」は、名誉マスターブレンダーのコリン・スコットが、特別にブレンドした日本限定のスコッチウイスキー。日本原産の希少なミズナラ樽で仕上げています。
ロイヤルハウスホールド

ロイヤル ハウスホールドとは「英王室」を意味。1897年に当時、英国下院の公式ウイスキーにもなっていたジェームズ・ブキャナン社が、英国王室から皇太子専用のブレンデッドスコッチウイスキーをつくるよう勅命を受けたことに由来します。
イギリス国内でも限られた場所でしか飲めない貴重なウイスキーですが、英国王室との友好な関係の日本では特別に入手することができます。45種類もの厳選された原酒が使われ、味わいは繊細で気品と風格があります。
デュワーズ ホワイトラベル

デュワーズは、1846年にジョン・デュワーが創業した世界的なウイスキーメーカーです。ウイスキーを初めてガラス製のボトルに詰めて販売したことで知られています。
デュワーズホワイトラベルは、初代マスターブレンダーのA.J.キャメロンが手掛けたブレンデットスコッチウイスキーで、1899年の発売以来、世界中のウイスキー愛好家に飲まれています。
スムースな味わいと華やかな香りが特徴で、ハイボールにぴったりです。
ティーチャーズ ハイランドクリーム

ティーチャーズは、スコットランドを代表する老舗のウイスキーメーカーです。ティー
チャーズの代名詞であるハイランドクリームは、キーモルトにアードモア蒸留所のシングルモルトウイスキーを使い、多種多様なモルトウイスキーとグレーンウイスキーがブレンディングされています。
独特のさわやかなスモーキーフレーバーとシルクのような優しい風味が特徴です。
オールドパー 12年

オールドパーの名前は、イギリス史上最長寿といわれた伝説の人物トーマス・パーの愛称からつけられ、末永く後世に伝えたいという願いが込められています。
スペイサイドのなめらかな水やアイラの豊かなピート香、キーモルトとして使われるクラガンモアの樽熟成など、スコットランド各地の蒸留所の特徴を巧みに融合させることで生まれる、複雑で豊かな味わいが特徴です。
水割りにバランスが崩れない味わいは、和食との相性も抜群です。
ジョニーウォーカー ダブルブラック

世界的に人気のジョニーウォーカー は、19世紀にスコットランドのキルマーノックという都市が発祥のウィスキーブランドです。
日本でも古くからレッドラベルを「ジョニ赤」、ブラックラベルを「ジョニ黒」と呼んで親しまれています。ジョニーウォーカー ダブルブラックは、ブラックラベルをさらに深くスモーキーに表現したウイスキーです。
インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ金賞や2015年サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティションの最優秀金賞など数々の世界的な賞を受賞しています。
カティサーク

カティサークは、1923年の発売以来、全世界で愛飲されているブレンデッドスコッチウイスキーです。イギリスの快速帆船「カティサーク号」が名前の由来で、ボトルに貼られたラベルには、この帆船のイラストが描かれています。
スペイサイドのグレンロセス蒸留所でつくられた原酒をキーモルトに数十種類のモルトとグレーンの原酒をブレンドし、ライドでスムースな味わいが魅力です。
ホワイトホース ファインオールド

ホワイトホースが誕生したのは1890年。以来130年間、世界中の人に愛されています。
ホワイトホース ファインオールドは、キーモルトにラガヴーリンを使用、他にグレンエルギンやオルトモアなど特徴的な甘味を持つスペイサイドの原酒を30種類以上とブレンドしています。
そのためフレッシュな香りとまろやかでドライな味わいが特徴です。
ディンプル 12年

ディンプルは、最も古いスコッチ蒸留家として知られる「ジョン・ヘイグ社」が、はじめてモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドして作った、いわゆるブレンデッドスコッチの草分け的なスコッチウイスキーです。
ローランドモルトのグレンキンチーをキーモルトにしているため、柔らかい甘い香りと、熟成したハイランドモルトが持つスモーキーなピート香が特徴です。
スコッチウイスキーの基礎知識
ここでは、スコッチウイスキーの基礎知識を説明します。
スコッチウイスキーの歴史
ウイスキーの製造方法が、いつスコットランドに伝えられたかは、はっきりわかっていませんが、12世紀から13世紀にはアイルランドからキリスト教とともに伝わったと言われています。
スコットランドに現存しているウイスキーに関する最も古い記録は、1949年に書かれたスコットランド財務省の記録で、「修道士のジョン・コーに8ボルの量のモルトを与えて、アクアヴィテ(aqua vitae)を造らしむ」というものです。
アクアヴィテとはラテン語で「生命の水」という意味です。これをスコットランドで使われていたゲール語で表すと「ウシュクベーハ」となり、そこから「ウイスキー」という英語が生まれたとされています。
当初、スコッチウイスキーは薬として修道院が独占的に製造していました。その後、16世紀に入ると宗教改革が起こり、修道院は解散され、蒸留技術が農家などに広まって製造が盛んになったそうです。
スコッチウイスキーの定義
スコッチウイスキーは、2009年に定められた法律によって次のように定義されています。
- 原料は水とイースト菌と大麦麦芽など穀物のみを使う
- 糖化から発酵、蒸留をスコットランドにある蒸留所で行うこと
- 蒸留時のアルコール度数は94.8度以下
- 容量700リットル以下のオーク樽に詰め、スコットランド国内の倉庫で3年以上熟成させること
- 瓶詰めする際に認められている添加物は水と色調整のためのカラメルのみ
- 瓶詰めする際のアルコール度数40度
スコッチウイスキーの分類
スコッチウイスキーは、以下の5つに分類されます。
シングルモルトウイスキー | 単一蒸溜所で造られたモルトウイスキーを複数の樽から瓶詰めしたもの |
シングルグレーンウイスキー | 単一蒸溜所で造られたグレーンウイスキーを複数の樽から瓶詰めしたもの |
ブレンデッドウイスキー | モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜて瓶詰めしたもの |
ブレンデッドモルトウイスキー | グレーンウイスキーを使用せず、複数の蒸溜所で造られたモルトウイスキーのみを混ぜて瓶詰めしたもの |
ブレンデッドグレーンウイスキー | 複数の蒸溜所で造られたグレーンウイスキーのみを混ぜて瓶詰めしたもの |
まとめ
スコットランドはウイスキー造りに適した風土を持つため、多くの蒸溜所があります。そのため、スコッチウイスキーは5代ウイスキーの中でも、突出した存在です。
銘柄の数が多く、自分はどのタイプのウイスキーが好きなのかを見つける楽しさがあります。
ぜひ飲み比べしてみてはいかがでしょうか。